行政学および地域社会学の知見に照らし合わせると、東広島市が直面している試練は、全国の地方中核都市が抱える課題の先駆けと言えます。国家プロジェクトをテコにしたトップダウン型の経済牽引と、住民相互の信頼に基づくソーシャルキャピタル(地域社会資本)の維持は、決して対立するものではなく両輪でなければ機能しません。
特定の産業誘致や都市開発だけに依存する自治体経営は、世界情勢や市況の急変に極めて脆弱です。真に持続可能な地域主権を確立するためには、行政と市民の間に健全な心理的境界線(バウンダリー)を保ち、過度な行政依存からも、逆に行政への過剰な不信感からも脱却する必要があります。
有権者が一票を託すにあたっては、明確な判断軸が存在します。「産業集積のスケールメリットを最大化し、強力なトップダウンで都市間競争を勝ち抜くビジョンを求める層」にとっては、実績と行政組織統率力を持つ路線が合致します。一方で、「過疎化が進む旧町村の福祉網を再建し、教育環境の格差是正やボトムアップの対話型政治を希求する層」にとっては、市政の優先順位を根本から見直す刷新路線が選択肢となるでしょう。自らの生活実感と都市の将来像を結びつけ、冷静に選択を行う知性が問われています。