ダニやノミの刺咬による激しい炎症を鎮め、将来的な炎症後色素沈着(PIH)や肥厚性瘢痕(ケロイド状の痕)を防ぐためには、早期の薬物介入が決定的な役割を果たす。日本皮膚科学会の診療指針においても、虫刺症に対する早期の強力な抗炎症療法が推奨されている。
治療の第一選択となるのは、十分な強さを持ったステロイド外用薬(局所コルチコステロイド)の使用だ。軽症用の市販薬をダラダラと塗り続けるよりも、炎症の初期段階で適切なランク(ベリーストロングやストロングクラス)の外用薬を短期間集中的に塗布するほうが、組織の破壊を最小限に抑え、痕を残さず治癒へ導く近道となる。患部に強い赤みや熱感がある場合は、保冷剤をタオルで包んで局所を冷やすことで、血管を収縮させ一時的な痒みの伝達を遮断する手法も有効だ。
また、夜間の無意識な掻破(かきむしり)は、患部のバリア機能を破壊し、黄色ブドウ球菌などが感染する「とびひ(伝染性膿痂疹)」を引き起こす最大の要因となる。これを阻止するため、医療現場では中枢性・末梢性の痒み刺激をブロックする第2世代の抗ヒスタミン薬の内服が併用される。痒みの悪循環を薬理学的に断ち切ることが、痕を残さないための鉄則だ。