熱海の歴史を紐解くと、かつて徳川家康がこの地の湯を気に入り、江戸城まで漆の樽に入れて運ばせたという有名な逸話に行き着く。古くから権力者や文豪たちを癒やしてきた食文化の土壌には、一朝一夕では作り得ない歴史の深みが刻まれている。歴史に思いを馳せながら味わう一膳は、旅行者の心をゆったりと満たしてくれる。
また近年では、人気ドラマ『孤独のグルメ』に登場した実在の食事処や、そのモデルとなった昭和レトロな大衆食堂を巡るファンが絶えない。飾らない雰囲気の店内で、壁に貼られた手書きメニューを眺めながらアジフライや刺身定食をつつく。そこには都市の喧騒から離れた、どこか懐かしく温かい時間が流れている。気取らない食のテーマパークとしての熱海もまた、実に魅力的だ。