出版不況が叫ばれて久しい日本出版業界において、室井滋の作品群は異彩を放ち続けている。単なるブームに頼ることなく、読者との息の長い対話を重んじるそのスタンスは、商業主義に傾きがちな業界に心地よい緊張感をもたらしてきた。
自らの老いや身体の変化、旅先での奇妙な出会い、そして失われていく昭和の風景。彼女が拾い上げるモチーフは常に身近でありながら、どこか普遍的な哲学を帯びている。2026年の現在においても、彼女の創作意欲は衰えるどころか、年齢を重ねたからこそ滲み出るユーモアと達観を湛えてさらに磨きがかかっている。