「ピエール瀧以外のオラフなど考えられない」「誰がやっても絶対に声の違和感が出る」――ネット上に渦巻いた絶望的な懸念を、鮮やかな技巧で払拭したのが声優の武内駿輔氏でした。2019年6月、ディズニーから後任決定がアナウンスされた際、当時21歳という若さに世間はどよめきました。
武内氏は17歳で『アイドルマスター シンデレラガールズ』のプロデューサー役に抜擢され、その重厚な低音ボイスから「武内P」の愛称で天才の名を欲しいままにしていた俊英です。しかし、オラフに求められたのは、重厚さとは真逆の「天真爛漫なハイトーン」と「言葉尻ににじむ愛嬌のあるしゃがれ感」でした。
オラフ声優比較において決定的な違いがあるとすれば、瀧氏が持っていた「天性の脱力感とおじさん特有の哀愁」に対し、武内氏は「徹底した音響解析と声帯コントロールによる完璧な職人技」でアプローチした点にあります。武内氏は後にインタビュー等で、前任者の芝居を徹底的にリスペクトしつつ、ブレスの位置や母音の抜き方まで研究し尽くしたことを明かしています。
その成果は同年11月公開の『アナと雪の女王2』のオラフで見事に結実し、劇中でオラフが早口で前作のあらすじをコミカルに説明する超高難易度のシーンでも、観客に一切の疑念を抱かせない圧巻のパフォーマンスを披露しました。