過去に発生した2つの死亡事故は、発生したシチュエーションこそ異なるものの、猛獣を飼育・展示する施設が抱える構造的なリスクを浮き彫りにしました。
1997年のトラ襲撃事故において、直接的な引き金となったのは「猛獣エリア内での窓開けおよび降車」という厳禁行為でした。祖父が幼い孫をあやすために抱き上げ、窓を開けたかドアを開けてしまったことが原因とされています。「車の中にいるから安全だろう」という心理的な油断が、一瞬の隙を突くトラの本能的な狩猟行動を誘発してしまったのです。
一方、2016年のクマ襲撃事故では、「巡回車両の防護構造の脆弱性」と「安全対策マニュアルの盲点」が厳しく問われました。当時、巡回車両の窓には動物の侵入を防ぐためのパイプ枠が設置されていましたが、パイプの間隔や窓の開閉幅がクマの頭部や腕が入り込む隙間を残していました。クマが力任せに窓の隙間を押し広げて車内に侵入できる構造だったこと、また単独での巡回作業が行われていた点など、園側のハード・ソフト両面における危機管理の甘さが事故調査で浮き彫りとなりました。