この作品を語る上で欠かせないのが、アニメ界の巨匠たちの若き日の情熱だ。演出を手掛けた高畑勲、場面設定と画面構成を担当した宮崎駿、そしてキャラクターデザインと作画監督を務めた小田部羊一。この伝説的なトライアングルが結実させたのが、本作の圧倒的なクオリティである。
当時、テレビアニメの制作現場において「海外現地取材」など誰も考えもしなかった時代。しかし、制作会社ズイヨー映像の決断により、彼らはスイスへと飛んだ。わずか十数日間の駆け足のロケハン。だが、宮崎駿は猛烈な勢いで現地の風景や農具、建物の構造をスケッチし尽くした。高畑勲は現地の空気感や人々の暮らしの匂いを貪欲に吸収し、小田部羊一は素朴で愛らしいキャラクターに命を吹き込んだ。
この取材で得られた実在感あふれるデータが、作中のあらゆるカットに息づいている。やがてズイヨー映像の改編を経て、スタッフの情熱は日本アニメーションへと引き継がれ、後の「世界名作劇場」シリーズという大きな潮流を生み出すこととなった。