国家機構が整備されるにつれ、政治の実権は満洲国国務院へと集約されていった。形式上、執政は国務院総理以下を統督する最高権力者と定められていたものの、実質的な決定権は「総務庁」と呼ばれる中枢機関を握る日本人官僚たちによって完全に牛耳られていた。
溥儀の手元に届く決済書類は、すでに総務庁で綿密に根回しが済んだものばかりだった。彼が異議を唱えようとしても、周囲を固める日本人顧問や警護官によって巧妙に情報が遮断された。愛新覚羅溥儀という血統が持つカリスマ性だけを吸い上げ、統治の実質的な権限を徹底的に骨抜きにするシステムがここに完成したのである。
自らの意志で動かせる軍隊を持たず、発布する法律すら自ら起草できない無力感。宮廷の儀礼に逃避することで自尊心を保とうとする溥儀の姿は、官僚機構という巨大な近代国家マシンに絡め取られた前近代君主の悲哀そのものだった。