ネット上の情報で最も注意を要するのが、「100均キャンバスならどんな画材でも問題なく描ける」という誤った言説です。特に100均キャンバス油絵耐久性については、重大な物理的リスクを孕んでいます。
安価なキャンバスの布地は、ポリエステルと綿の混紡であることが多く、施されているプライマー層は極めて薄手です。油絵の具に含まれるリンシードオイルやペインティングオイルが繊維の奥まで浸透すると、布地を酸化させて脆くし、数ヶ月から数年のスパンで布がボロボロに崩れる「油焼け」を引き起こします。また、木枠自体の乾燥処理が甘いため、油絵具の乾燥に伴う塗膜の収縮張力に耐えきれず、数年後に木枠が対角線上に反り上がってしまう事例も報告されています。
この耐久性の弱点を劇的に改善するプロの手法が、100均キャンバスジェッソ下地処理です。地塗り剤であるジェッソを原液、もしくはわずかに水で薄め、刷毛で縦・横と方向を変えながら2〜3層塗り重ねます。乾燥後に細かいサンドペーパー(#400程度)で表面を軽く撫でるだけで、布目の目止めが完了し、絵の具の過剰な吸い込みをシャットアウトできます。このひと手間で、アクリル画の発色が劇的に向上するだけでなく、油彩画の下地としても実用に耐える強度を獲得できます。