「ご無沙汰」は便利な言葉だが、文脈を誤ると意図せず相手を不快にさせてしまう落とし穴が存在する。文化庁が取りまとめる敬語の指針でも指摘されているように、敬語表現は単に語彙を当てはめるだけでなく、相手との相互関係や場面の適切さが問われる。
まず避けるべきは「ご無沙汰されております」という誤用だ。前述の通り、「無沙汰」は自分が連絡を怠っていた状態を指すため、受身や尊敬の助動詞「れる・られる」を組み合わせると、「相手が連絡を怠っていた」という意味合いに変質してしまう。これは相手を責める非礼な表現となるため、必ず「ご無沙汰しております」または謙譲の「ご無沙汰いたしております」を使わなければならない。
また、わずか数日や2〜3週間程度しか間が空いていない状況で使うのも不自然だ。「相手のことを忘れていたのではないか」「形式だけで適当に書いているのではないか」といった違和感を持たれかねないため、直近でやり取りがあった場合は通常の挨拶に留めるべきである。