下田の旧市街を歩くと、ふと潮の香りに混ざって古い木の香りが漂ってくる。室町時代の創立と伝わるこの神社は、古くから漁師や商人たちの信仰を集めてきた。だが、その歴史が一気に加速したのは江戸時代、港町として爆発的な発展を遂げた時期だ。
ペリー提督率いる黒船艦隊が下田沖に停泊し、日本が開国へと舵を切った1854年。異国の水夫たちが街を行き交う異様な緊張感の中にあっても、地元の人々は変わらず社に手を合わせ、町の平穏を祈り続けた。境内の一角に立つと、幕末の志士や名もなき町人たちが踏みしめた石畳が、今も変わらぬ姿で足を支えてくれる感覚に陥る。