乗客が「帰りたい」と後悔する最大の引き金は、船内の人間関係トラブルにある。ピースボートの客層は極めて二極化している。時間に余裕のあるリタイア世代のシニア層と、休学や転職の合間に参加する若者層だ。価値観も生活リズムも異なる両者が、相部屋や共有スペースで何ヶ月も寝食を共にすることで、摩擦が生じる。
特に深刻なのが4人相部屋などで発生する生活習慣の違いだ。就寝時間の不一致、消灯後の物音、スマートフォンの光、エアコンの温度設定、果ては洗濯物の干し方に至るまで、些細なストレスが日々蓄積していく。クルーに部屋の変更を求めても、満席に近い航海では希望が通らないケースも多い。
さらに、船内で形成されるグループ内の派閥争いや恋愛沙汰のもつれ、自主企画運営を巡る意見の対立など、人間関係の軋轢は枚挙にいとまがない。陸上であれば距離を置けば済む話だが、洋上では食堂でもデッキでも顔を合わせざるを得ない。「周囲の視線に耐えられず、寄港地に着くたびに日本への直行便を探していた」という生々しい体験談は、決して特殊な例外ではないのだ。