インターネット上で頻繁に議論される「夜勤を続けると寿命が10年縮む」という言説。この噂の科学的根拠を巡っては、情報が過剰に誇張されている側面と、無視できない医学的事実が混在しています。
まず事実として押さえるべきは、WHO(世界保健機関)傘下の国際がん研究機関(IARC)が、夜間交代勤務を「ヒトに対しておそらく発がん性がある」とされるグループ2Aに分類している点です。夜間に強い照明を浴びることで、抗酸化作用や抗腫瘍作用を持つホルモンであるメラトニンの分泌が劇的に抑制され、乳がんや前立腺がんのリスクが上昇する可能性が示唆されています。
さらに、ハーバード大学をはじめとする長期追跡研究(米国の看護師を対象とした大規模コホート調査)では、交代勤務を20年以上続けたグループにおいて、心血管疾患による死亡リスクの上昇が報告されています。しかしながら、「夜勤そのもので一律に寿命が10年短縮する」という単純な因果関係が立証されているわけではありません。リスクを跳ね上げている主因は、夜勤に付随する「不規則な喫煙・過度な飲酒」「暴飲暴食」「運動不足」「休日における極端な昼夜逆転」という生活習慣の破綻です。
適切な仮眠マネジメントを行い、体内リズムのブレを最小限に抑える対策を講じている従事者と、睡眠薬代わりにアルコールを煽り、暴飲暴食を繰り返している従事者とでは、健康への累積ダメージに決定的な差が生じます。噂を鵜呑みにして絶望するのではなく、リスクファクターを正確に切り分ける姿勢が求められます。