文学ファンにとって最大のハイライトとなるのが、作家・村上春樹氏との共同作業に光を当てた特設コーナーです。『村上朝日堂』シリーズをはじめ、『象の消滅』『夜のくもざる』『ふわふわ』など、数多くの作品で表紙や挿絵を手掛けたふたりのコンビネーションは、日本の出版文化史における奇跡的な出会いとして語り継がれています。
会場に並ぶ装丁原画の数々には、印刷物では味わえない鮮やかなリキテックスの絵の具の発色や、鉛筆による細やかな指定の筆跡がそのまま残されています。「水丸さんの絵を見ると、肩の力がすっと抜けて安心する」と語っていた村上春樹氏の言葉通り、物語の世界観に寄り添いながらも独自の軽妙さを放つ原画群は、まさに必見の価値があります。
装丁を手掛けるにあたり、ふたりがどのような会話を交わし、作品を世に送り出していったのか。貴重な往復書簡や当時のエピソードパネルも展示されており、単なるイラストレーターと作家という枠を超えた、深い信頼関係と友情の歴史を追体験できます。