従来の室町文化や安土桃山文化が、貴族や戦国武将、寺社勢力など特権階級のものであったのに対し、元禄文化の特徴は明確に「町人が主役となった初の都市文化」である点に集約されます。
この町人文化の特色を紐解くキーワードは「現世主義」「人間味」「リアリズム」です。仏教的な無常観や武士道的な名誉主義から解き放たれ、「今生きているこの世界をいかに面白く、豊かに楽しむか」という町人たちの価値観が前面に押し出されました。
また、徳川綱吉が推進した儒教(朱子学)の奨励は、学問や教育の水準を飛躍的に押し上げました。かつて悪政の象徴とされた生類憐みの令も、近年では戦国の殺伐とした気風を払拭し、弱者を保護する「徳治政治」への転換期であったと再評価されています。平和の定着によって社会全体の識字率と知的水準が底上げされたことも、文化の裾野を広げる強烈なエンジンとなりました。