時計の針を1971年4月まで巻き戻そう。当時、清掃用具のレンタル事業で急成長を遂げていた株式会社ダスキンの創業者・鈴木清一は、次なる事業の柱を模索していた。アメリカ視察の途上で出会ったのが、ハリー・ウィノカーが手掛ける「ミスタードーナツ」だ。高品質な手作りドーナツと温かい淹れたてコーヒーを笑顔で振る舞うダイナースタイルに、鈴木は心を奪われた。「この温もりあふれる食文化を日本にも根付かせたい」。その直感と情熱が、海を越えた歴史的提携を結実させた。
当時の日本の外食産業は黎明期。ハンバーガーすら日常に定着していなかった時代に、アメリカ仕込みのドーナツによる本格フランチャイズチェーンを展開するのは前代未聞の挑戦だった。1号店の地に選ばれた箕面は、大阪万博の熱気残る北摂エリアのハイカラなベッドタウン。オープン初日、物珍しいアメリカのスイーツを求め、店を幾重にも取り囲む大行列ができた。ガラス越しに次々と黄金色に揚がるドーナツの光景は、訪れた人々の記憶に鮮烈なインパクトを焼き付けた。