体操選手としての内村航平は、間違いなく歴史上最も偉大なアスリートの一人である。前人未到の記録を打ち立て、技の美しさと難易度を極限まで高めたその功績は色あせない。だが、体育館を一歩出た時、彼は一人の人間であり、一人の夫であり、一人の父親であった。
競技において完璧を追い求めた男が、家庭というコントロール不可能な人間関係の場で挫折を味わった事実は深い示唆に富んでいる。技の着地は完璧に決めることができても、人の心と人生の着地は一筋縄ではいかない。引退後のセカンドキャリアをスタートさせる中で、彼はこの痛烈な経験を胸に刻みながら、新たな自己像を模索することを余儀なくされた。