鋭利なヒレが手を切り裂くリスク――それがコチ調理の最大の難所だ。エラ蓋のトゲや背鰭の硬い棘は、毒こそないものの刺されば激痛を伴う。プロの職人はまず、キッチンバサミや出刃の背を使い、これらの危険部位を最初に断ち切る。安全の確保こそが、美しい仕上がりへの第一条件なのだ。
さらに頭部の解体には独自の角度が存在する。コチの骨はガラスのように固く脆い。力任せに包丁を叩き込めば、刃こぼれの原因となる。エラの後ろから斜め45度に刃を入れ、中骨の節目を狙うのが職人直伝の裏技だ。この一筋の切り込みが、身を傷つけずに頭部を外す鍵となる。
旨味を極限まで引き出す秘訣は、下処理における「血抜き」と「水分管理」にある。中骨に沿った血合いを綺麗に掃除し、塩を軽く振って余分な水分を抜く。刺身では透き通るような白身の歯ごたえと甘みが引き立ち、天ぷらでは加熱による身の縮みを防いでふっくらとした食感を実現できる。