もつ鍋のルーツである博多料理の素朴で豪快な魅力を継承しながらも、やま本の鍋には繊細な日本料理の精神が息づいている。鍋の上に幾何学模様のように美しく並べられたニラの緑、中央に整然と積まれたキャベツの山、そしてアクセントとなる真っ赤な鷹の爪。火にかける前のビジュアルからして、客を楽しませる美意識に満ちている。
野菜の切り方一つにも妥協がない。煮崩れせず、スープの旨味を最大限に吸い込むよう繊維の向きを計算してカットされたキャベツは、加熱されることで驚くほどの甘みを発揮する。豪快にかき混ぜるのではなく、じっくりと野菜のかさを減らしながら旨味を閉じ込める作法は、鍋という大衆的な料理をコース仕立ての割烹料理と同等の高みへと押し上げている。