気象庁および消防庁の救急搬送データが明確に示しているのは、年間で最も熱中症搬送率が急増するのは猛暑が極まる8月ではなく、急激に気温が跳ね上がる「5月中旬から6月下旬の晴天日」という客観的事実です。冬から春にかけて発汗機会が乏しかった身体は、皮膚血流量の増加や発汗による気化熱冷却システムが休眠状態にあります。この無防備な状態で初夏の直射日光を浴びると、自覚症状がないまま深部体温が急上昇してしまいます。
公的機関である環境省熱中症予防情報サイトが警鐘を鳴らす暑さ指数(WBGT)の上昇スピードは、年々早まる傾向を見せています。身体が暑さに慣れる生理的適応、すなわち「暑熱順化」が完了するまでには一定のタイムラグが存在するため、真夏日を記録してから慌てて対策を講じても手遅れになりかねません。平均気温が20℃を超え始め、日中の最高気温が25℃前後に達する5月上旬から中旬こそが、順化トレーニングに着手すべきデッドラインです。