享栄の長い歴史において、今なお強烈な光を放ち続ける伝説のサウスポーが近藤真市だ。1986年のプロ野球ドラフト会議において、1位指名で中日ドラゴンズに入団した男の衝撃的デビューを、当時の野球ファンなら誰しも覚えているだろう。
1987年8月9日、ナゴヤ球場での対ヤクルト戦。プロ初登板初先発という極限の緊張感のなか、18歳の若武者は9回を投げ抜き、NPB史上初となる「初登板ノーヒットノーラン」の大偉業を成し遂げた。内角をズバズバと突く強気のピッチングと、享栄時代に鍛え上げた強靭なマウンド度胸。バックネット裏のスカウト陣を激震させたあの夜の真実は、いまや球界の伝説として語り継がれている。
怪我との戦いという苦難の道を歩みながらも、引退後はコーチやスカウトとしてチームを支え続けた彼の背中には、享栄魂そのものが宿っていたと言っても過言ではない。