彼女の人間味を語る上で欠かせないのが、複雑かつ激動の家族関係である。最初の夫である和田芳夫とは深い愛情で結ばれていたものの、彼は召集令状によって戦地へ送られ、終戦直後に中国・上海からの引き揚げ途中で病死。幼い長男を抱え、両親をも相次いで亡くした嘉子は、孤立無援のどん底で幼子を育てるシングルマザーとしての生活を余儀なくされた。
のちに彼女が再婚相手として選んだのが、初代最高裁判所長官を務めた三淵忠彦の息子であり、自身も裁判官であった三淵乾太郎である。乾太郎には前妻との間に4人の子どもがおり、嘉子は実子と合わせて5人の子どもを育てるステップファミリーの母親となった。ドラマでは温かなホームドラマとして描かれた再婚生活だが、実際には多忙な裁判官業務と、血の繋がらない多感な子どもたちとの距離感に深く悩み続けた日々が、親族の手記などから明らかになっている。