市街地に迷い込んだツキノワグマやヒグマが射殺されるニュースが報じられると、該当自治体の電話窓口は鳴り止まなくなります。環境省や各自治体の広報担当者への取材によると、寄せられる意見の大半は「丸腰の動物を銃で撃つのは残酷だ」「山奥に運んで放してやるべきだ」というものです。
抗議の発信源を分析すると、出没地域外に住む大都市圏の住民からの電話やメールが約8割以上を占める自治体も少なくありません。被害の恐怖に直面している地元住民からは「早く駆除してほしい」「子どもを外に出せない」という切実な声が上がる一方で、遠く離れた安全圏にいる人々からは道徳的・感情的な批判が寄せられるという、二重の構造が生まれています。
この背景には、メディアの映像を通じて「怯えた様子の熊」に感情移入してしまう心理や、後述する麻酔銃や放獣に関する技術的・生態学的制約が一般に十分知られていない情報ギャップがあります。