地蔵菩薩はサンスクリット語で「クシティガルバ(大地の母胎)」と呼ばれ、あらゆる生命を育む大地のような広大な慈悲を持つ存在とされています。仏教の教えにおいて、釈迦が入滅してから未来仏である弥勒菩薩が現れるまでの56億7000万年もの間、現世に仏が不在となる暗黒の時代に、六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)を巡って人々を救うのがお地蔵さまの役目です。
なかでも「身代わり地蔵尊」の信仰の根幹にあるのが、「代受苦(だいじゅく)」という精神です。これは「衆生が受けるべき地獄の責め苦や現世の苦難を、自らが代わりに受ける」という究極の利他行を指します。平安時代後期から鎌倉時代にかけて成立した『今昔物語集』や『地蔵菩薩霊験記』などの説話集にも、無実の罪で拷問を受ける者の身代わりとなって刀傷を受けた話や、重病人の苦痛を背負って傷だらけになったお地蔵さまの逸話が数多く残されています。
民衆に寄り添い、どんなに過酷な境遇であっても身を挺して守ってくれる守護仏として、時代を超えて庶民の信仰を集め続けてきました。