『織江の唄』の誕生を紐解く上で欠かせないのが、戦後日本文学の金字塔である五木寛之の小説『青春の門』の存在です。主人公・伊吹信介の幼なじみであり、波乱の運命を背負いながら生きるヒロイン・牧織江。彼女が胸に秘めた切なくも激しい想いを楽曲として具現化するにあたり、白羽の矢が立ったのが当時すでに独自の世界観を確立していた山崎ハコでした。
関係者の回想や当時の制作記録によると、五木寛之が紡いだ情念に満ちた詞を受け取った山崎ハコは、その言葉の重みに共鳴し、自らの内省的なメロディラインを一気に昇華させたと伝えられています。単なるタイアップソングの枠を超え、文学とフォークミュージックが奇跡的な純度で融合した瞬間でした。
1981年のシングル発売当時、オリコンチャートの記録以上に、ラジオの深夜放送や有線放送を通じてリスナーの口コミが爆発的に拡散。「一度聴いたら耳から離れない」「涙が止まらない」という反響が全国へ広がっていきました。