銀幕のスター・阪東妻三郎の血を引くサラブレッドとして育ちながら、田村正和が真に独自の王国を築いた舞台はテレビだった。1980年代以降の『日本のテレビドラマ』の潮流を振り返ると、彼が果たした役割の大きさに息をのむ。二枚目俳優としてのストイックな矜持を保ちつつ、軽妙洒脱なホームコメディから重厚なサスペンス、スタイリッシュな恋愛劇まで、演じ分ける幅の広さは群を抜いていた。
カメラの前で決して汗臭さを感じさせない。感情をむき出しにして叫ぶような演技とは対極にある、引き算の美学。視線のわずかな揺らぎや指先の動きひとつで登場人物の葛藤や色気を描き出すその表現手法は、当時のテレビドラマのクオリティを一気に映画的な水準へと引き上げた。