採血手技において絶対に回避しなければならない重大な医療事故が、末梢神経損傷です。肘窩の内側を走る尺側皮静脈の周辺には正中神経や上腕動脈が近接しているため、安易な深部穿刺は厳禁とされています。日本臨床検査標準化協議会(JCCLS)の標準採血法ガイドラインでも、安全な穿刺部位の選定が強く推奨されています。
患者が穿刺時または針の進入中に「指先までビリッと電撃が走った」「強いしびれや激痛がある」と訴えた場合は、ためらわずに直ちに抜針しなければなりません。「少し我慢してください」とそのまま採血を続行することは絶対にあってはならず、即座に針を抜き、医師への報告と神経学的所見の確認を行うプロトコルを遵守します。
また、患者からのクレームに発展しやすい内出血の主な原因は「抜針直後の不十分な圧迫」と「穿刺部を揉んでしまうこと」です。採血終了後は、アルコール綿の上から穿刺部を親指で最低でも3分〜5分間、揉まずに持続圧迫するよう患者へ具体的に指導徹底することが、皮下血腫の予防に直結します。