『月光』の爆発的ヒットを語る上で欠かせないのが、テレビ朝日系で放送された仲間由紀恵・阿部寛主演のドラマ『TRICK』との邂逅です。演出を手掛けた堤幸彦監督は、人間の業や因習、哀しい嘘を暴くミステリーのラストに、救済と哀愁を併せ持つエンディング曲を強く求めていました。
当時まだデビュー間もない無名に近かった鬼束ちひろのデモ音源を聴いた制作陣は、その圧倒的な歌唱力と陰影に富んだメロディに即座に魅了され、タイアップに抜擢。自称・天才マジシャンの山田奈緒子(仲間由紀恵)と、物理学者・上田次郎(阿部寛)がコミカルに事件を解決しながらも、最後に残る人間の切なさや救われなさを、エンディングの『月光』が美しく包み込むという完璧な様式美を確立しました。
結果としてドラマの人気上昇とともにシングルチャートを驚異的な粘りで逆走し、オリコンチャートに約40週連続でランクインするロングヒットを記録。主題歌と作品がこれほど高い次元で補完し合い、双方のブランド価値を高め合った事例は、日本のテレビドラマ史上でも極めて稀有な成功モデルとなっています。