現在の輝かしい姿からは想像もつきませんが、彼のキャリアは深いコンプレックスと挫折の連続でした。自著や過去のドキュメンタリー番組で明かされたところによると、思春期の声変わり期に男性特有の野太い声にならず、高い声のままであったことから、中学時代に周囲からからかいやいじめを受け、不登校を経験しています。
転機となったのは、友人たちと行ったカラオケで倖田來未の楽曲を原曲キーで歌い上げた際、「翔太、歌がうまいね」と絶賛された体験でした。否定され続けてきた自らの声が「人に喜ばれる特技」へと反転した瞬間です。その後、2006年に「SHOWTA.」名義でキングレコードからメジャーデビューを果たします。
しかし、当時の音楽業界では「天使の歌声を持つ中性的な少年歌手」というプロモーション戦略が先行し、本人が望む音楽性や人間性との乖離に苦しむことになります。一時は活動休止を余儀なくされ、芸名を「柳ヶ木昇」に変えてアニソン歌手を目指すなど、暗中模索の時期を過ごしました。そして2010年、声優事務所への移籍を機に「蒼井翔太」としてのリスタートを切ります。
大ヒット作『うたの☆プリンスさまっ♪』の美風藍役に抜擢されたことで、彼の持つ中性的な高音ボイスと繊細な演技力は一気に評価を確立しました。かつて自らを苦しめた「高すぎる声」と「中性的な容姿」が、唯一無二の強力な武器へと昇華した瞬間でした。