音羽屋の看板を背負い続けてきた七代目尾上菊五郎。彼の真骨頂は、江戸の市井に生きる人々の息遣いをリアルに描き出す世話物や、洒脱で軽妙な粋を見せる立ち回りにある。長年にわたり歌舞伎界の第一線で観客を魅了し続け、人間国宝に認定されたその存在感は揺るぎない。
彼の芸風は単なる型のおさらいではない。役の心根を深く洞察し、舞台上で生き生きとした呼吸を吹き込む技法こそが、音羽屋直系の流儀だ。楽屋裏での厳しい指導と、舞台上で見せる包容力。七代目が築き上げたこの圧倒的な基盤があったからこそ、次世代の役者たちは安心して自身の可能性を模索できている。