コミケの霧がこれほど人々の記憶に刻まれているのは、それが単なる物理現象ではなく、参加者全員の情熱が物質化したかのような象徴性を帯びていたからだ。日本が世界に誇るコンテンツ産業の根底には、個人クリエイターとファンが直接交差する分厚い同人カルチャーが存在する。
数万人が同じ空間に集い、表現物を手渡しでやり取りするエネルギー。デジタル化が進み、オンラインでの同人誌即売や創作物の配信が主流となった時代にあっても、物理的な空間に集まることの意味は失われていない。むしろ、身体性を伴う空間共有の究極形として、過去の現象は今なお愛着を持って語られている。