この湯が「御所の湯」と呼ばれる理由は、鎌倉時代末期に遡る。後深草天皇の御姉女院がこの地を訪れて疲れを癒やしたという伝承が残り、かつては「御所の湯」「宮の湯」と称されて尊ばれてきた。京都の御所を思わせる優美な和風建築は、その歴史的背景を美しく映し出している。
あわせて、近代文学の舞台としても城崎は特別な意味を持つ。志賀直哉が自身の怪我の療養のために滞在し、名作として語り継がれる小説『城崎にて』を書き上げたエピソードはあまりにも有名だ。怪我や病を癒やし、生きとし生けるものの命を見つめ直した文学の景観が、今も湯船の窓越しに広がっている。