「軽い小遣い稼ぎのつもりが、気づいたときには強盗や詐欺の手先として組み込まれている」と、警視庁サイバー犯罪対策課の幹部は危機感をあらわにする。掲示板上の匿名アカウントを通じて持ちかけられる求人は、いわゆる「闇バイト」の典型例だ。身元を隠した指示役は、言葉巧みに相手の警戒心を解き、身分証明書の写真などを送らせて逃げられない状況を作り出す。
サイバーセキュリティ業界で長年分析を続ける専門家の辻伸弘氏は、ユーザー側の意識の薄さに警鐘を鳴らす。「ネット上に一度放たれたIDは、二度と完全に消去できません。自分のデジタルアイデンティティを自ら危険に晒す行為のリスクを、もっと深刻に捉えるべきです」。攻撃者は人間の孤独感や金銭的な焦りに付け込んでくるため、技術的な対策だけでは防ぎきれないのが現実だ。