なぜ『童夢』はこれほどまでに映像化が熱望され、今なお語り継がれるのか。その理由は、後のSF作品の表現手法を根底から変えてしまった独創的な世界観にあります。
同時期の金字塔である『AKIRA』と『童夢』の決定的な違いは、物語のスケール感と空間構造にあります。『AKIRA』がネオ東京の崩壊と再生を描く壮大な近未来サイバーパンク群像劇であるのに対し、『童夢』は東京郊外のマンモス団地という閉鎖空間を舞台にしたソリッドなサイコスリラーです。
モデルとなった巨大集合住宅の緻密な幾何学的美しさと、そこに暮らす住人たちの日常の猥雑さ。その日常の裏で繰り広げられるのが、認知症を患った孤独な老人「チョウさん」と、団地に越してきた無垢な少女「エッちゃん」による超能力バトルです。
壁面が半球状に窪み粉砕されるいわゆる「大友へこみ」と呼ばれる視覚的エフェクトは、目に見えないサイキックエネルギーの破壊力を完全に可視化し、以後のアニメ・漫画表現の基礎となりました。ネット上の読者評判でも「静寂と暴力のコントラストが鳥肌モノ」「何度読んでも背景の描き込みとコマ割りの緊張感が異次元」と、今なお絶賛の声が絶えません。