PlayStation 5の圧倒的な処理能力を支えるサーマルマネジメントは、コンソール開発史における大きな転換点であった。リードシステムアーキテクトを務めるマーク・サーニー(Mark Cerny)は、従来のファン制御にとどまらず、プロセッサが放熱する限界値を極限まで引き上げるアーキテクチャを構想した。その構想を物理的なハードウェアとして結実させたのが、SIEのメカ設計部門を率いた大鳥康裕氏を中心とする設計チームである。
大鳥氏らが直面した最大の壁は、高性能プロセッサから発生する莫大な熱量を、いかに効率よく熱伝導させて巨大なヒートシンクへ逃がすかという点にあった。従来のシリコングリスでは熱伝導率に限界があり、ファンを高速回転させて冷却性能を補うしかなかった。だがそれでは、静音性が犠牲になってしまう。そこで白羽の矢が立ったのが、液体金属サーマルインターフェースマテリアルであった。この革新的な選択により、ファン騒音を抑えつつ冷却効率を飛躍的に高めることに成功したのである。