八千草薫さんが自身の健康異変に直面したのは、2017年末のことでした。検査の結果、膵臓がんが見つかり、翌2018年1月に大手術を受けました。一度は現場復帰を果たしたものの、2019年春には肝臓への転移が判明し、本格的な闘病生活に入ります。
厳しい治療が続くなかでも、八千草さんは決して弱音を吐かず、常に医師や看護師への感謝の言葉を口にしていたといいます。病床にあっても「今日できること」を大切にし、病気と争うのではなく静かに受け入れながら、残された時間を穏やかに過ごしました。
そして2019年10月24日、都内の病院にて88歳で永眠。旅立ちに際して公表されたコメントでは、「作品を愛してくださったファンの方々、支えてくれた仲間たちへの深い感謝」が綴られており、最後まで気品と慈愛に満ちた八千草薫さんらしい最期となりました。追悼の場では、生前親交のあった多くの文化人や俳優仲間から、彼女の温かい人柄を偲ぶ声が寄せられました。