気孔とは、主に植物の葉の表皮に存在する「開閉可能な微細な孔(あな)」のことである。1枚の葉に数万個から数百万個が分布し、特に葉の裏側に多い。構成要素は主に2つ。ソラマメのような形をした「孔辺細胞」が1対、向かい合って孔を形成している。この孔辺細胞は、植物の表皮細胞の中では例外的に葉緑体を持つ。ここが非常に重要だ。気孔がただの物理的な「穴」ではなく、自ら光を感知し、エネルギーを生産できる「生きた弁」であることを示している。
なぜ植物に気孔が必要なのか。その答えは「光合成」と「蒸散」という2つの相反する要求を両立させるためである。光合成には空気中の二酸化炭素を葉の内部に取り込む必要がある。しかし孔を開ければ、同時に内部の水分が水蒸気として逃げていく。植物は水を根から吸い上げて生きているため、乾燥すれば即座に枯死リスクに晒される。気孔はこの「開けたい(CO2が欲しい)」と「閉じたい(水を失いたくない)」というトレードオフを、状況に応じて秒単位で調整する精巧な装置なのだ。