阿蘇くじゅう国立公園を取り囲むカルデラと山麓地帯には、手つかずの自然をそのまま借景にした野天風呂を擁するキャンプ場が点在する。筆者が現地へ足を運んで実感したのは、単に「入浴施設がある」レベルを超えた、本格的な湯治場のDNAを受け継ぐフィールドの進化だ。
代表格として知られる黒川温泉の周辺エリアでは、木立に囲まれた静寂なサイトと、加水・加温なしの源泉掛け流し温泉を同時に堪能できる隠れ家的な場所が注目を浴びている。湯守が毎日の湯量と外気温を計算して管理する浴槽は、硫黄の香りが微かに漂い、肌にまとわりつくような重厚な湯触りを持つ。夜半、ランタンの灯りを落として露天風呂に浸かれば、視界一面に広がるのは満天の星と湯けむりだけだ。
混雑を避けてこの至福を手に入れる秘訣は、週末の一極集中を外した「日曜日チェックイン」や「木曜発の連泊」にある。現地関係者によると、利用者の多くが土曜日に集中する一方、平日の夕暮れ時は露天風呂を独り占めできる時間帯が確実に存在する。観光協会の協力で整備された地元直売所で旬の食材を調達し、平日の静けさの中で地酒とともに湯に浸かる。これこそが、情報に踊らされないベテランキャンパーたちが実践している最大の裏技だ。