米アカデミー賞でノミネートを勝ち取るためには、作品のクオリティが高いだけでは到底不十分です。そこには「FYC(For Your Consideration=ご検討ください)」と呼ばれる、熾烈を極める数億円規模のプロモーション・ロビー活動が存在します。
映画祭関係者や北米配給会社の証言によると、1万人ものアカデミー会員に何百本もの候補作の中から自作のスクリーナー(試写リンク)を再生してもらうには、ロサンゼルスやニューヨークでの大規模な試写パーティーの開催、業界誌(『Variety』『The Hollywood Reporter』)への広告出稿、監督やキャストが直接会員と対話するQ&Aセッションの連日開催が不可欠です。『ゴジラ-1.0』が北米で異例の熱狂を巻き起こした際も、山崎貴監督自らが現地に飛び、ギレルモ・デル・トロやスティーヴン・スピルバーグといったハリウッドの重鎮たちと直に交流を深める姿がSNSで瞬く間に拡散されました。
日本の映画コミュニティやSNS(旧Twitter・5chなど)におけるアカデミー賞 ノミネート 日本映画 ネットの反応を追跡・検証すると、受賞結果に対してファンが示す感情のグラデーションが浮き彫りになります。
「低予算の邦画がハリウッドの傲慢な巨額VFXを打ち負かした瞬間は痛快だった」
「国内の映画賞では大手映画会社の無難なファミリー映画ばかりが評価されるのに、海外で本当に評価されるのは濱口監督や山崎監督のように尖った作家性を持つ現場だ」
ネット上のこうした生の声は、国内映画産業が長年抱えてきた「内需偏重への不満」の裏返しでもあります。観客は単に日本人が受賞したというナショナリズムに酔いしれているのではなく、日本の映画制作現場が持つ真のポテンシャルが、正当に評価されたカタルシスを共有しているのです。