長年、筋トレの定番食といえば高タンパク・低脂質・低価格の三拍子が揃った鶏胸肉でした。しかし、ボディビルやフィジークのトップ選手、第一線のアスリートたちの食事記録を検証すると、減量期はもちろん増量期であっても日常のメインタンパク質源として魚を重用するケースが目立ちます。その理由は、単なるタンパク質含有量の数値比較を超えた「体内での働き」にあります。
最大の要因は、青魚や鮭に豊富に含まれるオメガ3系高度不飽和脂肪酸(EPA・DHA)による筋肉合成の促進作用です。近年のスポーツ生理学研究では、十分なタンパク質とともにEPA・DHAを継続摂取することで、筋タンパク質合成のスイッチである「mTOR(エムトア)シグナル伝達経路」の感受性が高まり、同量のプロテインを摂取した場合でも筋肥大効率が向上することが確認されています。さらに、ハードなトレーニングによって生じる筋肉の微細な炎症を抑え、筋肉痛の早期回復を促す抗炎症効果も見逃せません。
もうひとつの決定的な違いが消化管への負担とアミノ酸吸収の速さです。鶏胸肉に含まれる強固な筋繊維結合組織は、人によっては胃酸分泌の低下や消化不良を引き起こし、慢性的な内臓疲労の原因となります。対して魚類のタンパク質は筋線維が短く水分を多く含むため、胃内滞留時間が短くスムーズに小腸へ送られます。「1日5〜6食を食べるコンテスト選手ほど、内臓を休めるために魚中心へシフトする」という現場証言は、極めて理にかなった選択といえます。