現代の車両に搭載されている電子制御燃料噴射装置(FI:フューエルインジェクション)とキャブレターは、燃料をエンジンに送るという目的こそ同じですが、そのアプローチは根本から異なります。インジェクション車との違いを一言で表すなら、「物理現象任せのアナログ供給」か「マイコン演算によるデジタル最適噴射」かという点に集約されます。
FI車では、吸入空気量、スロットル開度、エンジン回転数、冷却水温、排気中の酸素濃度(O2センサー)などを各種センサーが1秒間に数十回から数百回レベルで常時センシングしています。そのデータを車載コンピューター(ECU)が瞬時に解析し、最適な燃料噴射量を割り出してインジェクターと呼ばれる電磁弁から高圧で燃料を噴射します。標高数千メートルの高山地帯へ行こうが氷点下の極寒地であろうが、セルボタンを一度押すだけで即座にエンジンが始動し、アイドリングがピタリと安定するのはこの電子制御の賜物です。
FI車との比較において、両者の性能特性や維持コストの違いを構造データから整理したのが以下の比較表です。
このように数値を並べて比較すると、純粋な燃焼効率や実用性、燃費性能においてキャブ車がFI車に敵う部分はありません。FI車の燃費は同排気量のキャブ車と比較して概ね10%〜25%程度優れているのが通例です。しかし、性能が劣っているからといって「魅力がない」ことにはならないのが趣味の世界です。コンピューターに補正されない荒削りなトルクの立ち上がりこそが、乗り手の感性を強烈に刺激するのです。