もやし春巻きの最大の障壁は、もやし自体の組織構造にあります。もやし(緑豆もやし)は可食部の約95%が水分で構成されており、加熱によって細胞壁が破壊されると一気に内部の水分が外へ浸出します。何も下処理をせずに生のまま巻き込んで揚げると、加熱中に皮の内部が蒸気で充満して破裂したり、揚がった直後から皮の内側へ水分が移行してべちゃつきの原因になります。
この問題を解消する手法として、料理家の栗原はるみ氏が提案するアプローチが極めて合理的です。栗原氏のレシピでは、もやしを熱湯でサッと茹でた後、ザルに上げて粗熱を取り、「布巾やペーパータオルを使って手でギュッと水分を絞る」という工程を徹底しています。この物理的な脱水を行うことで、加熱後にもやしから余分な水分が染み出すのを劇的に防ぎ、シャキッとした心地よい歯ざわりだけを具材に残すことができます。
もう一つのアプローチは、電子レンジ加熱ともやし春巻きのとろみ付けに片栗粉を活用する手法です。クラシル等の大手料理メディアが提唱するように、耐熱容器にもやしや調味料を合わせてレンジ加熱(600Wで約1分〜1分半)し、出た水分を一度しっかり切った上で、具材に少量の片栗粉を直接まぶします。片栗粉に含まれるアミロペクチンが、加熱中にわずかににじみ出る残存水分をゲル化させて包み込み、皮へ水分が移るのを防ぐ防波堤の役割を果たします。