ブログ「拘置所日記」の内容は、反省や後悔とは程遠い、極めて特異な世界観で満たされていました。読者を最も驚かせたのは、拘置所の粗末な食生活を逆手に取ったかのような詳細な料理レシピと美食へのこだわりです。
木嶋佳苗は面会者から差し入れられる高級食材や調味料の組み合わせ、過去に自ら腕を振るったフランス料理やお菓子の調理工程を官能的とも言える豊かな語彙で描写しました。ル・コルドン・ブルーで学んだとされる料理の腕前を誇示し、自らが「男を胃袋で掴む家庭的な女性」であることを執拗にアピールしたのです。
一方で、検察側への痛烈な批判や裁判官に対する冷笑的な観察眼、自らを裁こうとする司法への不敵な態度は、読む者に底知れぬ不気味さを与えました。自らの身体的コンプレックスを感じさせない堂々としたフェミニティの主張と、冷徹なリアリズムが同居するその文章は、一部の読者を強く惹きつける奇妙な魔力を放っていました。