一歩足を踏み入れると、そこには甘い小豆の香りと、香ばしい焙じ茶の煙がほのかに漂う。看板メニューである職人お手製の生菓子は、一見すると美しい満月そのものだ。しかし竹べらで割った瞬間、中に仕込まれた発酵スパイスや有機果実のジュレが溢れ出し、従来の和菓子の概念を鮮やかに裏切る。
口に運んだ瞬間の驚き。甘みと酸味、そして微かな苦みが口内で混ざり合い、静かな余韻を残す。「古いものをそのまま守るだけでは、次の世代に響かない」。若き5代目店主はそう語る。創業から続く製法をミリ単位で守りつつ、素材の組み合わせには大胆なアヴァンギャルドさを取り入れる。この相反する要素の同居こそが、人々を惹きつけてやまない理由だ。