ネット上の掲示板やSNSを開くと、「あの心霊スポットの近くにある宿」「恐怖のロケ地」といった噂が今も散見される。結論から言えば、これは完全なる地理的な混同と誤解が生んだ虚構である。
事態を複雑にした背景には、2026年に公開された東映株式会社配給のヒット作、映画『犬鳴村』の存在がある。監督を務めた清水崇氏が描いた過激なホラーの世界観と、実在する福岡県の旧「犬鳴隧道」に纏わる怪談が一体となり、ネット空間で巨大な怪談現象へと膨れ上がった。
その煽りを直撃する形で受けたのが、名前を同じくする大阪府泉佐野市の犬鳴山だ。泉佐野市観光協会の担当者は苦笑いを浮かべながらこう語る。「問い合わせの電話で『本当に呪われているのですか』と聞かれることが何度もありました。福岡の旧トンネル伝説と、ここ大阪の歴史ある温泉地が混ざり合ってしまったのです」
現在、Netflixなどのストリーミング配信を通じて日本のホラー・ミステリー作品が世界中で視聴されるようになり、海外からの観光客が不気味な噂を確かめようと訪れる事態まで起きている。しかし、現地で彼らを待ち受けているのは、恐怖ではなく極上の癒やしと清らかな水流だ。