空前のブームの源流を辿るなら、決して外せない存在がある。「覚王山弁才天」だ。名古屋の歴史ある高級住宅街・覚王山で産声を上げた同店は、従来の和菓子業界にあった「大福=庶民的なおやつ」という固定観念を根底から崩した。極薄の求肥と、果実の風味を絶対に邪魔しない白あんの絶妙な比率。熟練の和菓子職人が培ってきた技術の応用でありながら、魅せ方はどこまでもモダンだ。
特筆すべきは、大福を専用の糸で自らカットする体験型スタイルを提案した点だろう。切り分けられた瞬間に露わになる息をのむような美しさは、「萌え断」というワードとともに一気に全国へ波及した。糸切りフルーツ大福という概念そのものが、新たな食のエンターテインメントとして確立された瞬間だった。