日本の奇術史を語る上で、テレビを通じて「超魔術」ブームを巻き起こしたMr.マリックの存在は外せない。昭和から平成にかけて大衆の目を釘付けにした劇的な演出は、やがてテーブルを挟んだ至近距離で魅せるクロースアップ・マジックへと深化を遂げた。特に、英国の由緒あるマジックサークルで最高位を獲得した世界的名手・前田知洋が確立した気品あるスタイルは、日本における奇術を単なる余興から一流のエンターテインメントへと昇華させた。
公益社団法人日本奇術協会に所属する実力派パフォーマーたちも、銀座のカウンターでその技を研ぎ澄ませている。彼らの指先には一切の迷いがない。照明の明るいテーブルの上、スリーブをまくった無防備な腕から繰り出される現象に、トリックを見破ろうとする観客も最後にはただ息を呑むしかない。理屈を超えた本物の奇跡がそこにある。