写真単体での話題性に先立ち、彼女と版元を結ぶ強固なパイプラインが存在していた。その原点となったのが、2016年に刊行された手記『あの日』である。理化学研究所の内部事情や騒乱の裏側を当事者の視点から赤裸々に綴った同書は、発行元の株式会社文藝春秋にとっても特大のベストセラーとなった。
さらに彼女を精神的に支えたキーパーソンとして、作家の瀬戸内寂聴氏の存在を無視することはできない。寂聴氏は早い段階から小保方氏へ温かい手を差し伸べ、世間の過激なバッシングに対して公然と苦言を呈した。後に雑誌『文藝春秋WOMAN』などで展開された対話や企画の根底には、傷ついた若き才能を包み込もうとする寂聴氏の慈愛と、それを丁寧にすくい取る編集者の緻密な構成力があった。
活字による反論から、ビジュアルによる自己再定義へ。単なる謝罪や言い訳に終始せず、一流の表現者たちとの協働を通じて物語を書き換えていくプロセスは、出版メディアの歴史においても極めて異例の試みだった。