午前4時の市場。まだ薄暗い空気のなか、バイヤーが競り落とした魚が、そのわずか数時間後には氷を敷き詰めた木箱に並ぶ。このスピード感こそが命骨だ。パック詰めされて数日経ったような冷たい切り身ではない。包丁を入れたばかりの丸魚が、銀色の鱗をギラつかせながら客を待っている。
「刺身は角が立っていなきゃ売らない」。鮮魚チーフの言葉に嘘はない。パックの端に滲むドリップなど皆無。切り口がピンと立ち、脂の乗り具合を手書きのPOPが雄弁に語る。大手の集中加工センターを経由するシステムでは絶対に真似のできない、圧倒的な物理的距離の短縮。それがそのまま皿の上の味の差になって現れる。