この悲劇を語る上で、恋雪の父であり、狛治の師となった慶蔵の存在を無視することはできない。慶蔵は狛治の過去を咎めることなく、その強さを「人を守るため」に使うよう導いた。彼が教えた素流拳法は、単なる武術ではなく、大切な者を守るための精神そのものだった。
慶蔵という絶対的な理解者を得たことで、狛治は初めて「まっとうな人間」として生きる未来を描くことができた。恋雪からのプロポーズを受け、彼女と生涯を共にすることを誓った瞬間、彼の人生は間違いなく光に満ちていた。しかし、その光が強ければ強いほど、その後に訪れる闇は深く、容赦のないものとなる。